学生の頃、代表の西村氏に連れられてしめ縄作りの体験に行った。
当時西村氏が勤めていた夜間学校の事務をしていた女性の、父がしめ縄作りの職人だった。

どちらが企画したのか、詳しいことは覚えていないが、その学校でしめ縄作りの体験ワークショップを開くということで、その補佐的な仕事を手伝う為にまずはその職人さんの家を訪ね、実際に作業場で縄綯いの手ほどきを受けた。

絵や彫刻など目で見る芸術作品を作るのは苦手だが、この縄綯いという作業がおもしろいようにおれの手に合った。

西村氏と同年代で瀬戸さんという人がいて、この人は売り物のような竹細工を易々と作る、異常に手先の器用な人なのだが、この日ばかりはおれの綯った縄をしげしげと眺め、しきりに感心している。
しめ縄作りの繁忙期は過ぎていた頃で、来年の時期にはぜひ手伝いに来いとおだてられたほどだ。

今年、智頭。

毎度、週末作業に向かったときを狙って崩れる天気の為、この週末智頭に向かった作業隊が無事脱穀を終えることが出来たかどうかまだ定かではないが、じきに田んぼでの作業も一段落、来週は収穫祭である。今後は乾燥や精米など田んぼ以外の場所で行う作業、加えて豆や蕎麦など収穫時期のずれる作物についての作業だ。

脱穀が済めば、大量の藁(ワラ)ができる。
正月の飾りなど自分で手作りしたいものだと、当時教わった自分の記憶を埋める為作り方を調べた。
資料に曰く、

「しめ縄作りに適した稲は、ワラの長くて柔らかい、もち米品種。
 収穫の約2週間前に刈り取ったものが、最適である」。

以前述べたように、今年の田んぼは稗(ヒエ)が大量に育ってしまった為、1枚の収穫を諦め青田刈りを行った。
その時はまだしめ縄作りに考えが及ばず、ただひたすら刈り取った青い稲を捨てていった。
軽トラの荷台いっぱいに積み上げた稗だらけの稲を、無造作にレーキですくっては捨て、すくっては捨てる。
その時は無価値になってしまったものを捨てているという意識したなかったのだが、もち米の少しでも蔵に入れて干しておけば、年末には最高な状態に近い藁でしめ縄作りに臨めたかもしれない。

そう考えると、なんとも惜しいことをしたと、今更ながら思わないでもない。