高学年向けの企画に参加する子どもには、どうしてもという場合のみリュックとシュラフ(寝袋)の貸し出しを行っている。「ぶらり」「熱田」「不自由」などに参加する場合、この2点だけはなければどうしようもないからだ。
逆に言えば、それ以外の装備には神経質になりすぎる必要はない。今自分が持っているものをうまく利用してくれればいい。
3月の下見、「かさは折りたたみで!」なんて日記で書きながら、自分の折りたたみ傘が折れたのでビニール傘をリュックに縛りつけて参加したらかっすんに即突っ込まれました。
そして、装備の不足をあまり気にせずに楽しむようにしてくれればいい。
一番してはいけない、というよりしてほしくないのは、価値がわからないままに高価な山用品を買ったり、もしくは買い与えたりということ。
おれは高1からOSKのリーダーとして参加したが、最初の数年はお泊りのイベントでも小学生時代に使っていた横長の赤いリュックを担いでいた。今で言うと智頭に参加するような子どもが背負ってくるようなやつ。なんとかなるもんである。
リーダーとして経験が増えていく中で、自分の装備以外に入れなければいけない、「団装」が増え、さすがにこれは限界だなと。それからは事務所に置かれていた先輩リーダーの山用リュックを借りて使った。
その、入ること。背負いやすいこと。やっぱりいいやつはいい。
ただ、そのリュックを「ああこれは便利だ」と気づくことができたというのは、それまで小さなリュックで過ごしていたという背景があったからだと思う。
現在おれが例会で使用している30ℓのリュック。これが相場8~9000円。
リーダーは例会に、自分の装備に加えその日の遊び用の道具、救急箱、その他団装を入れて参加しているが、それら一式が十分入るどころか、2,3泊の智頭での宿泊などもこれで十分。
さらに長期宿泊用の80ℓ。これは2万円超である。
テント、調理器具そのた一式すべて背負ったぶらりも、決して1人であるくわけではないので、80ℓがパンパンになる、ということは滅多にない。実際は1段下の60ℓでも十分事足りただろう。
宿泊用の大きなリュックを買う際、80ℓを選んだのは、ただの思い入れでしかない。
おれが若手の頃、バリバリトップでやっていた4つ上の兄貴分たちが背負っていたのが、80のリュックだ。
いざというとき。というのは例えば登山中にメンバーがちょっとしたケガや体調不良になった。
するとその兄貴分は、メンバーの荷物をガシガシと取り出して自分のリュックに詰めていく。みるみるリュックが空になり、そして残った空のリュックをくくりつけて、本人が手ぶらで歩けるようにして、様子を見る。
若い頃のおれにはそのリュックが堪らなくかっこよかった。重さが、違うのだ。
今、自然教室に参加している子どもへ。
自分が今持っているアイテムはそれぞれだろう。
おれのように小さい頃のままで過ごす子もいるだろうし、
最近は親がたまたまキャンプ好き、というのもよくあり、そこそこいい物を持っていることもあるかもしれない。
今持っているものを長く使ってほしい。
もう無理だ、というところまで、しっかり使ったら、新しい物はできれば、自分のお金で手に入れてみてほしい。
思い入れが違う。
そうやって手に入れたおれのリュックももう10年選手に近い。
どこのどういうものがいいか、ということについては聞いてくれれば、たくさんアドバイスします。
ただし、本格的な山用品というのはピンキリで、金額を上げれば上げるだけいいものがある。
ただ、自然教室は決して贅沢な遊びをしようというつもりはない。山に入り、その日目の前にあるもので遊ぶ。特定の道具や施設がなければ遊べない、ということは絶対にしない。
「使い捨て」が普通の今、そうやって1つの道具に思い入れを持って大事にしていくことにも、一抹の価値があるのかもしれない。そういえば、一部のリーダーは古くて普段着れなくなった服を自然教室用に下ろし、それから何年も捨てずに使っているようだ。
おれのリュックも、例会であちこち傷んでいるが、まだまだ現役であと10年やれそうな気配である。
それまでに新しいリュックを買って、後輩や子どもの為に提供するかもしれないし、大事に使い続けるかもしれない。ただ、誰かに貸すときは必ず「大事に使え、壊すな、使ったら拭け」と小うるさく言うと思う。
これが例えば、ひょいと貰った、とか、買ってもらった、とかいうものならそこまでの思い入れはないのかもしれない。自分で手に入れたからこその思い入れ。
そういう部分も、少しずつ感じてくれたらなぁと思う。