というわけで、今おれの手元には1冊の時刻表がある。

「全国版 コンパス時刻表(JR全線・全駅掲載) 2012’01」。

表紙に青のマジックで「66 個人持ち 使ってもいいよ」と書いている。

近年稀なる正統派鉄オタ、六郎リーダーの所有である。

こういう文章を書いておきながら、おれは鉄道にほとんど興味がなく、旅で電車を使うといえば風景を楽しんだりといった、車を運転していてはできないことに意識が向きがちだが、六郎ほどの玄人にとって電車はそれ自体が楽しみであり、「電車に乗る為に旅に出る」などという動機がまかり通る。

ここではそういうマニアの技はさておき、まずは時刻表の基本の基本だけを述べる。好きなやつは中学生でもおれなどより使いこなしているようだし、あとは個人の興味で見てくれればいい。

今はネットや携帯が便利で、駅探索なども一発だが、大きな知識背景の上での便利ツール、というのと、単なるやみくもな利用というのでは、ここぞというときにえらい目にあったりするものである。

時刻表を使う目的は大まかに、以下の2つの状況について情報を得ることである。

①この電車に乗れば、目的地にはいつ着くのか

②目的地に○○時までに着くにはどの電車に乗ればいいか

この稿ではまず①の場合について解説していく。

突然だが、なぞなぞを1つ。

「日本で一番高い場所にあるJRの駅はどこだ?」

「野辺山駅(標高1,345.67m)」とお答え頂いた鉄オタ諸氏に、おれがこの稿で提供できる目新しい情報は一切ないのでお帰り頂くとして、答えは「東京駅」。

そのココロは、全ての路線において、東京に近づく線を「上り」、東京から離れる線を「下り」としているからである。

何が特別役に立つというものではないが、基本的に関西在住たるOSK会員諸君が鉄道にて旅に出る場合、大まかに考えて「電車が下ればそれは西、電車が上ればそれは東」と考えることができる。方向感覚の基本的なところなので押さえておこう。
さて、では実際に特別教室で皆が智頭へ行くルート、普段の貸し切りバスでなく鉄道で行くとすればどうなるか、という仮定に基き時刻表を紐解いてみよう。

出発駅は新大阪、そして到着駅はOSKの智頭における拠点である、野原の家から歩いて15分の位置にある、「因美線」上、那岐駅である。土曜日、朝9時半の出発とする。
手順その1。

時刻表の一番最初のページ、発行月の時事ネタ広告が終わる頃、「さくいん地図」というページが現れる。まずはこの地図に載っている路線で出発駅、到着駅を探し、その2点を繋ぐ路線を決める。

大阪から尼崎、神戸、西明石と続く「山陽本線」で「上郡」まで。そこから「智頭急行」線上「智頭」駅へ。さらに因美線を2駅で那岐駅に到着する。
この地図は「さくいん地図」であり、何の索引かというと時刻表の索引であり、つまり今回使用する「山陽本線」、「智頭急行」、「因美線」の時刻表が何ページに載っているか、という情報がここにある。例を挙げれば、「山陽本線」←117131→とあり、これは山陽本線の上り(即ち京都方面)は本誌131ページから、一方下り(即ち西明石、岡山方面)は117ページから記載されているということである。
この法則に従い、今回のルートを追うと、

①新大阪~上郡

山陽本線(117ページより)

②上郡~智頭

智頭急行(316ページより)

③智頭~那岐

因美線(316ページより)
上記の3つのルートを運行する電車の時刻が正確に分かれば、それらを繋いで目的地への到着時間を知ることができる。
時刻表を辞書に例えるならば、

「新大阪~上郡」という単語の意味を調べ、「上郡~智頭」という単語の意味を調べ、さらに「智頭~那岐」という単語の意味を調べれば、「新大阪~那岐」という文章の意味は理解できる、というわけである。

この稿続く。