この企画を立てる時欠かせなかったのがシマダスという書籍です。このシマダスを発行しているのは、国交省の外郭団体である財団法人離島センターです。初版は1998年、改訂版が2004年に出されたまま、もう出版されないのかな思っていたところ、昨年秋に15年ぶりに発行されました。

『ぶらり旅』は今でこそ一企画か二企画がやっとですが、はしりとなる企画を1980年に行い、数年間をあけてから本格化させました。『ぶらり旅』は他の企画と違って現地下見はせず、大阪で事前に下調べをした上で後はぶっつけ本番、訪れた先で地元の人とどう交渉していくかが醍醐味でした。とはいえ、ベースの下調べがどれだけでききるのかで旅が決まります。

1990年代後半からは瀬戸内や天草・五島・対馬など目指して三つ行われる企画も、島を訪れる企画が多くなりました。その時、全国の離島すべてを網羅し、1300ページを超えるシマダスは一番の情報源でした。情報の宝庫であるシマダスを読み込んで基本的なイメージをつくりました。やがてネット時代の到来もあり、ネットで下調べの肉付けしていきました。

今や地方からの発信も多くなって情報も取りやすくなりましたが、新版もなかなかのものです。掲載されている情報も増え、ページ数も1800を超え、ビジュアル的にも、特に地図など工夫されており、島のことを伝えたいという意気込みがヒシヒシと伝わってくる、お役所の仕事としては思えない一級品であり、そして、これは役所にしかできない仕事でもあります。

値段も3000が4000円(税別)に値上がりしていますが、それ以上の価値ある一冊です。ただ難点は他にやらねばならない仕事があるにもかかわらず、あまりにもおもしろくてシマダスを開いてしまうことです。

◇もう一つ、『ぶらり旅』でのアイテムは『時刻表』です。

以前、私は持ち運びもできるコンパクト版を愛用していました。しかし、数年前からは携帯版を諦めて、買うのは普通の時刻表(B5版)にしていました。さらに、ここ3年前からは大幅にダイヤ改正される3月に文字通り、『文字の大きな時刻表』を購入しています。普通の時刻表は毎月発行されるのですが、この『大きな』版は四季ごとの年4回の発行で、今年もこれを先日購入しました。

    大きな時刻表の表紙 1枚

『ぶらり旅』を若いリーダーたちと打ち合わせていくうえで、まずしていくことの一つが時刻表の使い方の指導です。「時刻表」のページを行ったり来たり繰り返しをして、接続を確認しながら企画を検討していきます。あれこれ想定しながら、「時刻表」を駆使することによって企画を練り上げていくのですが、それを理解できたリーダーは十人ほどでしょうか。

今では便利なネット検索で出発・到着を確認できるため、これに慣れきっている若いリーダーにそれを求めることは酷なのかもしれません。しかし、ネット検索では単純すぎ、きめ細かな計画を立てるには路線の接続だけでなく、途中下車を含めていろんな旅の可能性を調べて行くには「時刻表」:路線時刻表こそが必要なのですが、それに対応することはできません。

実は、唯一ネット検索で路線時刻表を見ることができる『えきから時刻表』というサイトがありました。ここをずっと愛用してきたのですが、昨年3月にサービスを終了してしまったため、以来『時刻表』だけが頼りになっています。今時の風潮としては路線時刻表はまどろこっしくて必要なものではないのでしょう。時刻表の検索サイトは増えているのに、老舗である『えきから時刻表』は淘汰されてしまったんでしょう。

「時刻表」は、かつて隠れたベストセラーといわれていました。現在、JTB出版と交通新聞社出版と二つあります。かつて国鉄のオフシャルとしてJTB版のみの発行でしたが、1987年の国鉄民営化後にJRのオフシャルとして交通新聞社版が発行されるようになりました。

その前年の1986年には200万部以上発行しており、現在JTB版は10万弱、交通新聞社版が40万弱で、いずれも減少傾向だそうです。

JR監修とうたう交通新聞社版は駅員やみどりの窓口、(株)日本旅行で使用することもあり、また、JTB版も意地があると思うので、今後も出版が終了することはないとは思います。

 しかし、現在の風潮からすると、購買者は旅行業界鉄道オタクと時刻表を使い慣れた中高年ということでしょう。

今回、交通新聞社版の「大きな文字の時刻表」を購入するにあたって書店予約する際、JTB版もあることを知りましたが、こちらは価格が1900円で年1回の3月出版でした。なんで高いのかなと不思議でしたが、書店の時刻表売り場に行きましたら納得。

JTB版は同じ判型で、縮小した「小さい時刻表」と「普通版」と「大きな時刻表」の三種類を出版していました。判型を組み直すのは手間と時間がかかりますので、コスパとしては理解できますが、家置き用とはいえJTB版「大きな」には無理があるなと思いました。

それと、JTBが交通公社時代の復刻版が複数出ていたり、いろんな出版本があることを改めて知りました。それは小型だったんですね。